外壁の塗装工事を行う際に、塗装しなくても良い場所に塗料が付着してしまったり、天井や外壁を塗装中の塗料が飛び散り、隣の家の壁や車を汚してトラブルになってしまったりしては、良いリフォームとはいえません。
塗料がはみ出していると非常に見栄えが悪いばかりか、近隣とトラブルになるとその後の暮らしにも支障があります。
そんなことにならないために、塗装作業に入る前の養生が重要な役割を持ちます。
外壁塗装の養生って何?養生の目的
養生とは簡潔にいうと、外壁塗装時における塗料の飛散防止のための保護作業のことです。
塗装リフォーム現場で広く取り入れられている作業工程のひとつで、外壁の塗装工事を行う前に、基礎として塗料が付着してはならない場所をビニールやマスカーと呼ばれる特殊なテープなどを使用して保護する作業のことを言います。
基本的には塗装工事というのは外壁だけでなく、軒天(のきてん)と呼ばれる天井の部分や屋根なども塗装していくため、上から下に塗料が飛散したり、風が強い日などは塗料が舞ってしまうことがあります。
塗料の飛散や塗らなくてもよい場所に塗料が付着してしまわないように、業者としては高い知識と専門性でこの工程が必要です。
養生の基礎ができていなければ、リフォームの完成度に影響すると業者の間で重要視されるくらい大切な工程となります。ビニール養生やマスカーテープ、マスキングテープと呼ばれる紙テープなど様々な種類の道具を使用して工事をおこないます。
養生は作業終了時には全て撤去するのが原則なので、後に残ることはありませんが、塗装工事での養生の良し悪しは塗装の出来映えばかりでなく、近隣とのトラブル防止にも大きな影響を与えるため、決して軽視することはできません。
塗り替えリフォームを検討している方は、しっかりとその工程が大切であることを認識しておきましょう。
外壁塗装の養生って具体的に何をするの? 養生の方法
外壁の塗装工事は塗り替える場所が壁面だけとは限りません。
基本的には屋根や軒天、そのほか雨どい、シャッターボックス、庇(ひさし)なども同時に塗装することがあります。
それ以外にも塗装を希望する箇所があれば塗装していきますが、養生シートを塗装しない場所に貼らないといけません。
ここからは具体的にビニール、マスカー、紙テープなどを使っておこなう養生作業の方法を解説していきます。
足場に飛散防止用ネットを張り、家全体を覆う
外壁塗装工事の前に高圧洗浄をおこないますが、隣地や前面道路への高圧洗浄時の洗浄水の飛散や塗料の飛散を防ぐために、事前に飛散防止用ネットで家全体を覆います。
通常は足場を組み立てる際に、足場全面にネットを張ります。ネットを張る作業も養生の意味合いと同じで、思わぬ作業員の落下防止や外壁、屋根、天井塗装時の塗料の飛散防止のためにおこなう工程です。
足場ネットは、別名メッシュシートとも呼ばれています。
養生シートで車や植栽、塗らない部分を覆う
外壁塗装には、刷毛やローラーを使用して塗装する方法と、スプレーガン等を使用して塗料を吹き付ける方法がありますが、特に屋根や外壁を「吹き付け」で塗装する場合には、注意が必要です。なぜなら強風時には、風向きによって思わぬところまで塗料が飛散してしまうケースがあるためです。
車や植栽、カーポートなどにビニール養生などを施すなど、念入りな養生が必要になります。
尚、養生の仕方が悪いと、かえって車に傷をつけてしまうこともあるので、細心の注意を要します。
基本的には車などには専用のシートをかぶせるのですが、強風などで飛んで行ってしまうこともあるため、テープなどで抑えたりします。、テープは剥がすときに傷つけてしまう可能性があるため、車のタイヤホイールなどにつけ、ボディなどには貼りません。テープや養生シートをかはがすときには注意が必要です。
塗装しない部分をマスカー|ビニールで養生する
塗料は液体なので飛散することはもちろん、十分に注意して塗装しても、塗らなくても良い部分にまではみ出してしまうことがあります。
一度付着した塗料は、簡単に落とすことができません。
塗料の飛散を防ぐために、高圧洗浄作業や下地処理が終わると塗装作業に先立ち、塗装しない部分にしっかりと養生を行います。
前述のビニールやマスカーと呼ばれる養生の道具を使用してきれいに塗装しない部分を保護していきます。
マスカーとは、テープとビニールが一緒にくっついた保護ビニールのことです。マスカーのテープ部分でローラーやハケが一番当たる外壁と塗装しない部分の見切りを隠し、ビニール部分は長さの違うものがあり、隠すものの大きさによってマスカーのビニールの長さを調整して養生していきます。
養生の良し悪しは、仕上がりにも影響するので重要な工程です。塗装前の基礎となりますので隠し忘れがないように点検しながら養生していきます。
外壁の部位ごとに塗り替えを行える様に養生する
外壁を2色に塗り分ける場合など、最初に塗装しない部分をテープやビニールシートでカバーしておいて、次に塗装する部分の作業を行う際には、先に塗装した部分を養生します。
それぞれの箇所から色がはみ出すことを防ぎ、綺麗に塗り分けることができるようになります。
外壁塗装の養生中に注意すべき点とは?
外壁塗装を行う際に不可欠な養生ですが、養生している間には生活していく上で注意すべき点があります。
②給湯器やエアコンが使えなくなる
①.工事中養生ビニールを貼ったままなので窓が開けられない
外壁塗装工事前の養生の注意点一つ目は、窓枠やサッシのビニール養生中には窓を開けることができなくなってしまう点です。冬はさほど問題ありませんが、夏は生活する上で不便さを感じることになるでしょう。
さらに足場に飛散防止用のネットを張ると、昼間でも薄暗く感じます。工事中は多少の我慢が必要ですが、どうしても不便を感じる様であれば業者に養生を作業終了ごとに外してもらえないか相談してみると良いでしょう。
良い業者であれば、リフォーム工事中の生活にできるだけ支障をきたさない様に、親身になって養生の対策を講じてくれるはずです。
②.給湯器やエアコンが使えなくなる場合がある
外壁塗装工事前の養生の注意点二つ目は、外壁塗装工事中には給排水設備、給湯器等をビニール等で養生しますが、そのままの状態で給湯器等の燃焼機器を使用すると、異常着火や燃焼不良が発生する可能性があることです。
機器の故障や火災、場合によっては一酸化炭素中毒など人体に重大な被害をもたらすこともあるので、工事の際には十分注意して危険がない様に養生してもらう必要があります。
また、室内換気のための換気口などが養生で覆われている時には、室内での石油ストーブなどの使用を控える必要があります。
業者は養生だけでなく塗装工事の知識が豊富なので、基本的にはトラブルにならないよう上手に養生しますが、まれに知識や基礎ができていない見習いの方が養生をしてしまうことがあります。いい業者はしっかりと作業を監視していますが、トラブルが起こらないように注意しましょう。
その他業者によっては、養生中にエアコンが使用できなくなることもあるので、事前に給湯器やエアコンなどの使用の可否を必ず業者と打ち合わせしておく様にしましょう。
ビニール養生は、テープの貼りが甘いとビニールが夜間バサバサと音を立てて、騒音の原因にもなりかねませんのでしっかりとビニールをテープで固定した養生をしてもらいましょう。
養生が手薄で万が一塗料が飛散してしまったら?
外壁塗装作業が終了したら、足場を解体する前に室内外を隅々までチェックして、塗料の飛散を見つけたら速やかに施工業者に報告するようにしましょう。
業者側でも養生をはがした後にチェックを行いますが、室内への塗料の飛散など気付かない場合もあるので、施主のチェックが不可欠です。
塗装工事の際には、業者も細心の注意を払って塗装作業にあたりますが、塗料が飛散してしまうケースは皆無ではありません。
万一塗料が飛散して塗装しない部分に付着してしまった場合には、剥離剤などを使用して塗料を剥がします。
また、隣の家や車に塗料の飛散の被害が及んだ場合には、保険を適用して損害を賠償します。
他にも工事中に足場の上から物を落として通行人にケガを負わせたり、高圧洗浄水がかかって通行人の衣服を汚したりした場合にも保険が適用できます。
ただし、業者が「請負業者賠償責任保険」に加入していることが条件になるので、万一の場合に備えて、事前に業者に保険加入の有無を確認しておくと良いでしょう。
しかし一度近隣とトラブルになると、その後の暮らしにも何かと影響する様になってしまいます。
そうならないためにも、養生は重要な作業工程のひとつと認識しておきましょう。