木造の外壁をお持ちのかたのなかには、そろそろ塗装をしたいと思う方もいるでしょう。一方で木造の外壁は、サイディングなどと素材が異なります。このため、どのように塗装したらよいかわからないと悩む方も、いるのではないでしょうか。
木造外壁も、よい塗装をすることは可能です。現在では木材用の塗料も多く市販されていますから、心配はいりません。また木材ならではの注意点を守って塗装することは、満足する外観を得ることにつながります。
この記事では、木造外壁を塗装する際に使う塗料のポイントや塗装の方法を解説します。本記事を読むことで、木造外壁を塗装に必要な知識を得られ、美しい塗装につなげることができます。
1 木造外壁の特徴
木造外壁には、さまざまな特徴があります。外壁塗装をうまく進めるには、木造外壁について知っておくことが重要です。
木造住宅によく使われる外壁素材
木造住宅に使われる外壁素材には、スギやヒノキ、ヒバがよく使われます。外壁に使われる製品は加工の方法により、以下の3種類に分けられます。
・天然木を塗装したもの
・パーチクルボード(木材の小片と接着剤を混合して、板状に熱圧成形したもの)
・MDF(木の繊維を原料として成形したもの)
木材の特性と、塗装で考慮したい点を知る
木材は特徴のある素材の1つで、以下のようなメリットがあります。
・湿度を調節する機能がある
・温かみを感じる
一方で、以下に示すデメリットもあります。
・高温多湿の環境では腐りやすい
・シロアリなどに食べられたり、菌が繁殖してもろくなるおそれがある
・日光や紫外線などにより、変色するおそれもある
このため木造住宅を守るためには、木材を保護することも考える必要があります。塗装はこの課題を解決する、有効な方法の1つです。
ここからは木材へ塗装する際に考慮したい点について、考えていきます。
腐らせたり、虫の被害を受けないための工夫
さきに解説した通り、木材は腐ったり、虫の被害を受けるリスクがあります。しかしこのリスクは、以下のように塗料で防ぐことができます。
・木材が腐ることを防ぐ塗料は「防腐塗料」
・シロアリの被害から守る塗料は「防蟻塗料」
・虫の被害から守る塗料は「防虫塗料」(シロアリ対策の成分が配合されていない場合がある)
これらの機能は、下塗りや上塗り塗料の成分として配合されている場合も多いです。たとえば下塗り用塗料に含まれる場合は、下塗りをすることで木材の保護をトータルに行えますから便利です。
紫外線による変色への対策
木材は紫外線を受けることで、変色してしまいます。変色は一様でない場合もあり、多くの場合は外観の悪化につながります。対策方法としては、紫外線吸収剤を含んだ塗料を使うことがあげられます。
2 木造外壁の塗装に適した塗料
木造外壁の塗装を行う場合は、木材ならではのポイントがあります。ここでは塗料の種類や選ぶポイントについて、解説していきます。
木材部分に使われる塗料は2種類ある
木造住宅の外壁に使われる塗料は、塗料の性質により以下の2種類に分けられます。
・素材の表面にくっつき、塗膜を作る塗料
・素材の中に浸透する塗料
上記を見ただけでも、大きな違いがあることがわかります。それぞれの特徴について、詳しく解説していきます。
素材の表面に塗膜を作る塗料
木造住宅には他の住宅と同様、素材の表面にくっついて塗膜を作る塗料も多く使われます。これらの塗料の使い方はモルタルやサイディングなどと同様、下塗り用と上塗り用に分かれています。
・下塗り用塗料:素材への吸い込みを防ぎ、上塗り塗料との接着性を良くする
・上塗り用塗料:木材や下塗り用塗料を保護し、必要に応じて色を出す
いずれの塗料も「木部用」など、木材に使える塗料を選ぶ必要があります。
素材に浸透する塗料
木材に特徴的な点は、素材に浸透する塗料もあるという点です。この塗料は、「ステイン」と呼ばれます。
ステインを塗ると塗料は表面にとどまらず、木材の内部に染み込みます。このため、木材を効果的に保護することができます。塗料によっては、ステインを複数回塗り重ねることで仕上げることも可能です。
塗料選びのポイント
木造外壁に使う塗料を選ぶには、いくつかのポイントがあります。塗装を失敗しないよう、あらかじめ選び方を知っておきましょう。
外壁の素材や、希望する目的に合った塗料を選ぶ
木材を塗装するには下塗り用、上塗り用を問わず、木材に使える塗料を選ぶことが必須です。塗料は「木部用」「鉄用」などに分かれていますから、木部用と書いた塗料を選びましょう。
また木材が腐らないようにしたり、虫の被害を防ぎたい場合は、防蟻・防腐成分が配合された塗料を選ぶことも重要です。紫外線による変色を防ぐには、紫外線吸収剤が含まれた塗料も発売されていますから、利用を検討しましょう。
あわせて、下塗り塗料と上塗り塗料との相性も確認する必要があります。特に下塗りが水性塗料、上塗りが油性塗料の場合は、塗膜に不具合が起きる場合もあります。加えて、過去にステインが塗られている場合ははがすことができないため、使える塗料は限定される場合があります。このため塗料の説明書きなどを見て問題がないか、事前によく確認しておきましょう。
なお木材に使う塗料の場合は、同じ塗料で透明なものを下塗り用、色つきのものを上塗り用として用いる方法もあります。
「屋外用」「外部用」と書かれた塗料を選ぶ
塗料は塗る場所により、以下のように製品が分かれています。
・屋内用
・屋外用、外部用
両者は成分が異なります。そのため外壁に塗る塗料は、「屋外用」「外部用」と書かれた塗料を選ばなければなりません。
素材の持ち味を生かすかどうかで、選ぶ塗料も変わる
木材の塗料を選ぶ際には、素材の持ち味を生かすという選択もあります。この場合はステインなど、木目を生かせる塗料を選んで塗る必要があります。木の味わいを生かすかどうかはあなた次第ですが、後からでは変えられません。このため、塗装前にしっかり決めておくことが重要です。
一方、ステインで塗装する場合は塗膜を作らないため、塗膜を作る塗料と比べて耐水性や耐久性は劣ります。またツヤも出すことはできません。
木材への塗装の効果は、3~5年程度
モルタルやサイディングへの塗装は、10年以上もつ場合も多いです。一方で木材へ塗装する場合、木は湿度などにより伸び縮みするため、塗膜が傷むスピードも速くなります。
このため、木材への塗装は3~5年程度で塗り直さなければなりません。従って10年以上長持ちする塗料を塗っても、あまり意味はありません。それよりも伸縮性のあるウレタン塗料などを選ぶことで、よい塗装を手頃な価格で行うことができます。
3 木造外壁を塗装する手順
木造外壁を塗装するにはただ塗るだけでは不十分で、いくつかの手順を踏む必要があります。ここでは塗装する手順に加えて、どのような材料や道具が必要かという点についても解説していきます。
必要な材料や道具
木造外壁を塗装するためには塗料はもちろん、多くの材料や道具が必要となります。ここでは塗装をするために何を揃えればよいか、解説していきます。
塗料以外にも必要な材料がある
塗装に使う塗料は、そのままでは塗りにくい場合があります。この場合はうすめ液を使いますが、使えるものは塗料により、以下のように異なります。
・水性塗料:水
・油性塗料:ペイントうすめ液(主成分はシンナー)
うすめ液は塗料とセットで使うものですから、塗料といっしょに購入しましょう。
塗装には、さまざまな道具が必要
塗装をする際には、さまざまな道具が必要です。以下の道具は、塗装作業に直接使うものです。
・ローラーや刷毛
・塗料の受け皿(ローラー皿やバケットなど)
・ウエス(工業用の布きれ)
・マスキングテープやマスカー(塗装しない部分を保護するために必要)
・サンドペーパー(下地処理に必要。80番~100番のものと、240番のものを用意)
ローラーや刷毛のどちらを使うかは、塗料の説明書きで指定されている場合も多いですから、指示に従いましょう。
塗装作業をする際にはあなた自身を保護するため、以下のものも必要です。
・ビニール製の手袋(布や革製の手袋は、塗料が染み込む場合がある)
・塗料は付着すると取れないため、汚してよい服装や、レインコート
また余った塗料が出た場合は固めて捨てる必要がありますから、事前に塗料処理剤も用意しておきましょう。
場合によっては、足場を組むことも必要
人は手を伸ばしても、高いところは塗れません。ローラーのなかには継ぎ足し棒を使い、長くできる製品もありますが、それにも限度があります。また脚立を使って塗る方法はバランスを崩しやすく、頻繁に脚立を動かす必要もあるため、安全ではありません。
このため2階建て以上の住宅を塗装する場合は業者に依頼し、足場を組んでもらう必要があります。
塗装前に必要な下地処理
木の外壁を塗装し直す場合、外壁材の表面は以下のような状況となっています。
・汚れが多く付着している
・毛羽立ちが多く発生している
このため、まず高圧洗浄機などできれいに汚れを落としましょう。その後、毛羽立ちを取るためにサンドペーパーを用意して、表面のざらつきを落とします。80~100番のサンドペーパーを使うことがおすすめです。
塗装の手順
下地処理が終わったら、塗装をすることになります。
木造外壁を塗装する手順は、ペンキとステインでは多少異なります。それぞれについて、手順を説明していきます。
ペンキの下塗り
ペンキで塗装する場合は、1回塗りでOKという塗料も発売されています。しかし建物を保護するためには、下塗りと上塗りを両方行うことが必要です。
下塗りには、木材専用の下塗り用塗料が使われます。外壁の素材が木の場合は下塗り塗料が乾いた後、240番前後のサンドペーパーを使い、表面のざらつきを取りましょう。
ペンキの上塗り
下塗りが終わったら、上塗り用塗料を使って塗装します。塗装する前に、木材に使える塗料かどうかをよく確認しましょう。また外壁は過酷な条件下にありますから、多くの塗料では上塗りを2回以上行うように記載されています。
ステインを使う場合
ペンキに代えてステインを使う場合は、下塗り段階からステインで塗装することになります。その後ステインを重ね塗りしたり、透明な塗料を塗り重ねて仕上げます。