コンクリートの壁は、表面の仕上げ方によっては独特の質感があり、高級感のあるお家になりますよね。
あなたのお家の外壁がコンクリートで出来ている場合、その頑丈さに安心しきってしまうかもしれませんが、実はコンクリートの外壁は、塗装工事でしっかりメンテナンスする必要があります。
汚れやひび割れが目立っている場合は、コンクリートが持つせっかくの雰囲気も失われてしまっていると思います…。
1 コンクリート壁の塗装時期はいつ?
コンクリート壁には、定期的な塗装工事が必要になりますが、約10年を目安に塗装するのがオススメ。
ただし、ほかの外壁材に比べて、コンクリート壁はとてもひび割れやすいため、10年は目安にして、業者さんによる点検はこまめに行なってもらいたいです。
ひび割れから雨水が侵入して、コンクリート壁の内部に埋め込まれている鉄筋まで届くと、サビが発生して外壁全体が危険な状態になります。
定期的に補修や塗装を行なっておけば、大きな劣化は防ぐことができるため、頑丈なイメージにとらわれず、優良な業者さんでしっかりお手入れをしてもらいましょう。
2 コンクリート壁の種類
コンクリート壁と言っても、表面の仕上げ方は様々な種類があるので、私と一緒に確認していきましょう。
あなたのお家のコンクリート壁がどんな見た目なのかも、思い出しながら見てもらえると嬉しいです。
打ちっぱなし
コンクリート壁の中でも、オシャレで高級感のある「打ちっぱなし」と呼ばれる種類は、コンクリートそのものが、そのまま外壁のデザインとなります。
作られ方も、表面を仕上げる必要がないため、コンクリート壁を作るだけですが、最近は、仕上げに撥水剤を塗ることが多いです。
コンクリートは、水分を吸い込みやすい性質があり、雨に塗れると真っ黒に色が変わりますが、コンクリート壁の表面に撥水剤を塗っておくと、雨水を弾いて元の色味を保ち、汚れを防ぐことにも繋がります。
塗装仕上げ
コンクリート壁そのものを作るだけで完成となる打ちっぱなしに対して、表面にペンキを塗ったり、様々な仕上げ方で模様を作っているコンクリート壁もあります。
住宅の外壁によく使われている外壁材の一つ、「モルタル外壁」は、リシンやスタッコ、吹き付けタイルと言った「吹き付け仕上げ」で仕上げられる事が多く、表面がデコボコ模様。
コンクリート壁の中には、モルタル外壁のような見た目の種類もあり、コンクリート壁の表面にモルタルという粘土を塗って、吹き付けや色の付いたペンキで仕上げるため、表面の仕上げ方はまったく同じです。
打ちっぱなしはコンクリートの質感を活かした外観ですが、一般的な塗装で仕上げると、逆にコンクリートの雰囲気が隠れるため、コンクリートの感じを出したくない場合はオススメ。
タイル張り
コンクリートの上にモルタルという粘土状の材料を塗って、タイルを張り付けていくタイル仕上げの外壁は、使うタイルによって色の数や質感など、デザインが豊富。
光沢が少ないタイルもあれば、釉薬(ゆうやく)と呼ばれる薬を表面に塗って焼き上げられた、ピカピカのタイルもありますが、外壁には磁器タイルと呼ばれる種類のタイルが使われやすくなっています。
コンクリートが見えなくなるため、コンクリート壁というよりはタイル張りの外壁となり、違ったオシャレさを出せる仕上げ方です。
我が家の外壁はコンクリート?
あなたのお家がコンクリート壁かどうかを見分けるのは、難しい場合があります。
打ちっぱなしと呼ばれる、コンクリートそのものが表面に出ている場合は分かりやすいですが、中にはコンクリート壁の表面が、モルタルで仕上げられていると、モルタル外壁のように見えることも。
プロでも見分けるのが難しいと言われているので、あなた自身で見分けるのは難しいかもしれませんね。
そのため、経験豊富な業者さんに、お家を丁寧に調査してもらうのがオススメです。
3 コンクリート壁の作られ方
あなたのお家の外壁が、コンクリートで出来ていても、どのように作られたのかまでは、恐らく知らないですよね。
コンクリートの外壁がどのように作られるのかを知っておくと、お家のコンクリート壁に起きる劣化についても分かりやすくなるので、私と一緒に製造工程を見てもらえると嬉しいです。
そもそもコンクリートとは?
まず最初に、コンクリートというものについて見ていければと思いますが、「グレーで硬い」「鉄筋が入ってる」このようなところは、何となくわかりますよね。
そもそも、コンクリートとは何かというと、次の成分が混ざり合って出来ています。
水+セメント+砂+砂利=コンクリート
これらが化学反応を起こして、あの硬いコンクリートになっていくんです。
コンクリート製の外壁を作る時は、お家を守れる強度を保つために、中に鉄筋を入れて作られるため、正確には鉄筋コンクリート。
鉄筋コンクリートは、Reinforced(強化)Concrete(コンクリート)を省略した「RC」とも言われ、「RC造」というのは、鉄筋が入っているコンクリートで造られている建物という事になります。
モルタル・ALCとの違い
お家の外壁を考える時、コンクリートと混同しやすい外壁材に、モルタル外壁とALC外壁があります。
3つの外壁がどのように違うのか、一緒に確認していきましょう。
コンクリート | モルタル | ALC | |
---|---|---|---|
成分 | 水+セメント+砂+砂利 | 水+セメント+砂 | 水+珪石+セメント+生石灰+発泡剤 |
作られる場所 | 現場 | 現場 | 工場 |
現場に運ばれる時 | 泥 | 泥 | パネル※工場では泥 |
鉄筋の有無 | 鉄筋が入る | 鉄筋は入らない※金網が入る | 鉄筋が入る |
こうして見ると、コンクリートとモルタルはとても似ていますが、鉄筋の有無によって、モルタル外壁よりもコンクリート壁の方が頑丈です。
また、コンクリート壁は現場で泥の状態から作るため、工場で作られたパネルを張り付けていくだけのALCよりも、施工の手間や期間が掛かってしまいます。
しかし、ALCはモルタル外壁のように、吹き付けで模様付けされていることが多く、打ちっぱなしコンクリートの雰囲気は、コンクリート壁だからこそです。
コンクリート壁が作られる工程
【1】型枠の設置
コンクリート壁を作るところに、型枠を設置。
型枠の中にコンクリートを流し込み、固めることによって外壁を作ります。
木製や鋼製などがあり、型枠によって外壁の幅も決まるため、コンクリート壁の形を作る大事なところです。
【2】セパレーターとPコンを設置して幅を決める
型枠の内部に、セパレーターと呼ばれる金属製の棒を取り付け、型枠の幅が均等になるようにします。
セパレーターの両端には、Pコンというプリン型の部品が設置されており、Pコンだけ型枠から貫通しますが、セパレーターはそのままコンクリートの中に残り、Pコンは最後に撤去。
打ちっぱなしコンクリートの表面にある丸い跡は、Pコンの跡なんです。
【3】コンクリートを流し込む(打設)
コンクリートを型枠に流し込む作業は、「打設」「打ち込む」などと呼ばれます。
流すのに打つと言う理由は、棒などで突きながら流し入れる動作から来ているなど、諸説あるようです。
コンクリートを流し込んだだけでは、空気を含んだまま固まり、気泡がたくさん出来てしまうため、次の工程で空気を抜きます。※ここでは工程を分けていますが、工程3・4を同時に行うことが多いです。
【4】空気を抜いて密度を高める
バイブレータ―とは、長いホースのような振動する機械のことで、型枠に流し込んだコンクリートの中に差し込み、コンクリートを振動させることによって、中の空気を抜いていきます。
また、バイブレーターと同時に、型枠の外側からハンマーでコンコンと叩き上げることによって、しっかりと空気を抜き、気泡が残らないようにするんです。
【5】表面を叩いてならす(タンピング)
タンパーやトンボと呼ばれる、柄のついた板を使って、流し込んだコンクリートの表面を上から突き固めたり、平らにならしていきます。
この作業はタンピングと呼ばれ、前の工程と同じく余分な空気や水分を抜くために行われる作業です。
【6】コンクリートが固まったら、型枠を外す
コンクリートが固まったら、型枠を外していきます。
型枠に流し込んで突き固めてから、24時間も経てば硬くはなりますが、コンクリートが持つ本来の強度になるのは、打設をしてから28日後。
コンクリートは、乾燥して固まるのではなく、水分とセメントの化学反応(水和反応といいます)によって固まりますが、型枠を外す時期が早すぎると、固まるために必要な水分が逃げてしまい、適正な強度にならないんです。
【7】Pコンを外してモルタルを詰める
型枠を外すと、コンクリートの壁が現れますが、初めの方に型枠へ取り付けたPコンが、コンクリートの表面にくっついているので、専用の工具を使って取り外します。
Pコンが外れると穴が残るため、穴の中をモルタルで埋めて、固まったら完成です。
4 コンクリート壁のメリット・デメリット
コンクリートは圧縮に強く、引っ張りに弱いという特徴があります。
圧縮や引っ張りに耐えられなくなると、コンクリートのひび割れに繋がりますが、内部に鉄筋を入れることによって、引っ張られる力を受け、コンクリートの弱点を補うことができるんです。
外壁に使われるコンクリートは、強度を保つために鉄筋コンクリートとなっている事がほとんどなので、頑丈な外壁ですが、メリットだけでなくデメリットもあります。
あなたのお家のコンクリート壁について、メリット・デメリットを知ると、必要なメンテナンスについても納得しやすくなるため、私と一緒に見ていきましょう。
<メリット>
遮音性・防音性に優れている
木造のお家に比べると、コンクリート壁のお家は、外からの音を遮ったり、お部屋の音が外へ漏れにくいという特徴があります。
お隣さんとのトラブルを防ぐことに繋がるため、ご近所さん同士、快適な暮らしができる嬉しいメリットです。
耐火性に優れている
コンクリート壁は火に強いため、火事が起きても燃え広がるスピードは、木造住宅よりも遅いです。
このおかげで、コンクリート造りのお家は火災保険の保険料が、木造に比べて安くなっています。
オシャレな外観
表面の仕上げ方によっては、モルタル外壁のように一般的なお家と変わらない見た目の種類もありますが、打ちっぱなしのコンクリート壁の場合は、高級感のあるオシャレな外観になるため、周りのお家とデザイン性の差が付きます。
コンクリート壁は、お手入れをしないままだと、黒ずんだりサビが出てきてしまいますが、定期的なメンテナンスによって、キレイな状態を保つことが出来るんです。
<デメリット>
ひび割れしやすい
コンクリート壁は、ほぼ必ずと言っていいほど、ひび割れが起きてしまうものです。
ひび割れについては、次の「コンクリート壁に起きる劣化現象」で一緒に見ていければと思いますが、メンテナンスを行なえば、ひび割れてもキレイな状態に直すことができます。
水を吸い込みやすい
打ちっぱなしのコンクリート壁は、水分を吸収しやすい性質があり、舗装などでよく見るコンクリートの道路が、雨水に塗れて黒くなっているのを、あなたも見たことがあるかもしれません。
コンクリート壁が水分を吸収すると、カビが発生したり、空気中の汚れを含んだ雨水によってシミができてしまい、見栄えの悪いお家になってしまうんです。
表面を塗装しておくと、水分の吸収を防ぎ、同時にカビや汚れを防ぐこともでき、透明な塗料を使えば、打ちっぱなしのコンクリート壁も雰囲気を残したまま、キレイな状態を維持できます。
夏は暑く、冬は寒くなりやすい
コンクリート壁は、熱を伝えやすいという性質があるため、夏は外気の暑さが、冬は外気の寒さがお部屋に入ってきやすいです。
そのため、断熱材があることによって、快適な温度で過ごすことができますが、コンクリート壁の内側に断熱材を入れると、結露しやすいという欠点も…。
そこで、コンクリート壁を断熱材で覆う「外断熱」が使われやすくなっていますが、打ちっぱなしのデザインにしたい場合、断熱材で隠れてしまいますよね。
しかし、最近は打ちっぱなしの模様を、塗装で表現することができ、コンクリートでも快適に過ごせる工法が進んでいるんです。