「養生」と聞いてもいまいちピンと来ない人も多いはずです。一般的に、養生といえば「日々の生活に配慮し、健康を増進させる」という意味を持つ言葉として使われています。
引越しの際の運搬作業で壁を傷つけないようシートとクッションゴムなどで守ることを養生ともいいます。
では、外壁塗装における「養生」とは、どんな意味があるのでしょうか。
今回は、外壁塗装における養生の役割について、詳しく紹介していきます。
1. 外壁塗装における養生とは?
外壁塗装など建築用語での「養生」とは、工事現場で建物の「保護」を目的とした作業工程の1つです。家やビルなどの建物にビニールシートやメッシュシート覆うことで、建物を守ります。最後に、養生をすべて取り払い納品・完成となることが多いです。
1−1. 塗料が飛び散るのを防ぐ
外壁塗装における養生は、塗料から建物の塗装しない部分を守る役割をしています。作業の過程で塗料が飛散したり、はみ出したりしてしまわないように、あらかじめ養生を施すことが基本です。
2. 養生作業で使うもの
養生作業に使う道具にはたくさんの種類があり、用途に合わせて使い分けます。それぞれの道具の名前と特徴をご紹介しましょう。
【養生用ポリシート】
養生用ポリシートは、窓や窓枠などを塗料から保護するときに使います。一般のビニールと異なり、付着した塗料が乾燥しても塗料が剥がれ落ちにくいため周囲を汚しにくくなります。
【マスキングテープ】
粘着力の弱い「止めテープ」です。養生用ポリシートを窓や窓枠にはる際に使用します。粘着力が弱いため、家屋を傷つけたり、汚したりすることがありません。マスキングテープの代わりに手切れ性の高い養生カットテープを使用することもあります。
【マスカー】
マスカーは優れた道具で、養生用ポリシートとマスキングテープの役割を果たします。作業性の高いマスカーを使えば、貼ると覆うを同時に行うことが可能です。
【ノンスリップマスカー】
ノンスリップマスカーは、床の養生に使用します。特徴はマスカーに滑り止めの機能が加わっていることです。塗料の飛散から壁や窓を防ぐマスカーは便利ですが滑りやすいため、足元の養生には向いていません。代わりに滑りにくくなっているノンスリップマスカーを使用します。
【ブルーシート・布カバー】
広い範囲の養生を目的とした場合、ブルーシートや布カバーを使います。ブルーシートで広範囲の養生を行い、人が歩く幅だけノンスリップマスカーを使うという組み合わせでも使用されています。プラべニアという壁面養生を簡単にする資材もあります。
【カーカバー】
カーカバーは、文字通り車全体を覆う際に使用することが目的の養生資材です。強風で塗料が遠くまで飛ばされる可能性があるときや、施工場所と車の位置が接近している場合に使用します。
【飛散防止ネット】
家全体を覆うことが目的のメッシュシートです。足場の設置と同時に施され、完成の際に取り外されます。高圧洗浄の際の水はねや塗料の飛散を防ぎます。
3. 外壁塗装の流れと養生作業
外壁塗装において、「養生」は欠かせないものです。ここでは、※外壁塗装と養生作業のおおまかな流れを説明します。1つずつ見ていきましょう。
・1日目|仮設足場と飛散防止シートの設置
安全かつ効率よく作業をするために、家の周りに仮設足場を建設します。仮設足場は作業員が移動したり、塗装作業をするためのものです。
足場ができたら、周りに飛散防止シート(メッシュシート)を張ります。刷毛とローラーでの塗装が主流ですが、それでもかなりの量の塗料が飛んでしまうこともあるため、飛散防止シートの設置は必要不可欠です。
・2日目|外壁の洗浄
業務用の高圧洗浄機で塗装する予定の外壁を洗浄します。適切な水圧で行わなければ、外壁にダメージを与える可能性がありますが、外壁塗装の下地を作る重要な作業です。
・3,4日目|壁の乾燥
乾燥は外壁塗装で欠かすことのできない大切な作業です。高圧洗浄機で洗い流した壁は、乾燥させる必要があります。
この乾燥の作業を怠ると、塗料が壁に密着せず太陽光が当たることによって壁に残った水分が膨張。結果、壁にポコポコと泡のような膨れが発生してしまい、仕上がりが悪くなります。
・5日目|下地処理(下地調整)
下地処理は、新しく塗装を施すために壁の補修などをする作業のことをいいます。「ひび割れや」「壁の崩れや剥がれ落ち」を補修し、塗料が馴染みやすくするために壁を平らにすることが目的です。
・5日目|養生
専用の道具を使い、壁・ドア・窓を塗料から守る工程です。どんなに気を付けていても、塗料は少なからず飛び散ってしまいます。外壁塗装において、養生は重要な作業です。
・6日目|外壁塗装(下塗り)
ようやく、外壁塗装に移ります。外壁塗装は下塗り、中塗り、上塗りと3回以上壁を塗装することが基本です。
下塗りは下地処理の延長ととらえることができます。「色付け・壁の保護」を目的とする上塗りをしっかりと壁に密着させるための作業です。シーラーという薬剤を使い、ボロボロになった壁のなかに浸透させ固めます。
外壁の材質や状態によって、下塗り材を使い分け、シーラー以外にも「プライマー」「フェラー」「バインダー」などがあります。
・7日目|外壁塗装(中塗り)
中塗りは上塗りと同じ薬剤を使用することが主流です。色付けと壁の保護が目的になります。中塗りをすることで、薬剤の効果をより引き出すことができますが、中塗りをしたかどうかは、作業が済んでしまうと判断が難しいため、中塗りと上塗りの色を分けてします。
・8日目|外壁塗装(上塗り)
外壁塗装の仕上げにあたるのが「上塗り」です。見た目にも差が出るため、経験が必要な作業といわれています。中塗りと上塗りでわずかに色を分ける業者がいますが、それは塗り残し防止のためです。そのような業者でしたら安心といえるでしょう。
・9日目|養生取り
外壁塗装のみの場合、ここで養生を取り払います。
マスキングテープやポリシート、ブルーシートを丁寧にはがして、ゴミも業者が持ち帰ります。
・10日目|業者・顧客による確認作業
業者が、塗りムラ・塗り残し、作業の際に塗料が必要のない場所に飛び散っていないかをあわせて確認します。
そのあと、業者と一緒にお客様が塗装箇所を確認して周ります。隅々までチェックし、気になる点があれば遠慮せずに聞いてみましょう。足場を解体した後では、作業の手戻りが大きくなります。
・11日目|仮設足場解体
飛散防止シートと仮設足場を解体したら、外壁塗装の全工程が終了となります。昼夜の光の加減で、塗装は異なる見え方をする場合があることを理解し、最終チェックのつもりで家をぐるりと見て周りましょう。
・12日目|清掃・受け渡し
外壁塗装で使ったゴミの回収や汚れの清掃をします。すべてが完了したら引き渡しとなります。
※屋根塗装や付帯部塗装はしない場合の工期の目安です。それらの作業をする場合もう少し、日数がかかると考えてください。