
新築、リフォーム問わず、外壁塗装の見積書によく記載されている「プライマー」という単語。
塗装に本当に必要なものなのかもわからず、疑問を抱いたまま見積書を鵜呑みにしてしまう方も多く存在します。
この記事では、プライマーがどういったものであるか、利用するデメリットやメリットなどを記載していきます。
1 プライマー塗装とはなにか
プライマー塗装は、外壁塗装の下塗り工程です。
外壁の塗装は、下塗りをしてから上塗りをするのが一般的です。
下塗りは、外壁の下地作りとなります。
プライマーの語源が「primary(最初の)」ということもあり、外壁塗装の最初の工程として欠かせないものだと覚えておくと良いでしょう。
2 そもそも外壁の工程って?
外壁塗装の工事ではさまざまな工程のあとに塗装をします。
スムーズに進めば外壁の工程は2週間程度ですが、どの部分で時間がかかるか等も含めて以下で確認しておくと良いでしょう。
おおよその流れとしては下記のようになります。
1. 足場の設置
2. 外壁や屋根の洗浄
3. 養生
4. 下地処理
5. 下塗り
6. 中塗り
7. 上塗り
8. 足場解体
まずは足場の設置を行います。
足場の組み立てが終わり次第、外壁の洗浄作業が入ります。
洗浄は、綺麗に塗装を行うために必要な工程です。
洗浄が終わればいよいよ下地の処理作業がはじまります。
塗装時に周囲を汚さないために養生をすることも必要です。
養生と下地処理後は、下塗りと中塗りを経て、上塗りをしていきます。
それぞれの塗装を乾燥させる時間もかかるため、天候や季節によって工期に差が出る部分といえるでしょう。
最後に点検をしてから、必要があれば修正や微調整をおこなって足場の解体をします。
3 プライマー塗装をするメリット
プライマーを塗装するメリットは以下の3つです。
塗装の仕上がりが良くなる
プライマーは上塗り剤の馴染み具合が良くなるメリットがあります。
下塗りは、既存の壁との馴染みが良くなるだけではなく、これから塗っていく中塗りや上塗りの塗装ののりかたにも大きく影響をします。
プライマー塗装を行うことによって、より長持ちして綺麗な外壁に施工することが可能となるのです。
密着性が高まる
プライマーには接着剤としての役割もあります。
外壁は塗装前の段階だと吸湿性能が高いです。
そのまま仕上げ塗料を塗ってしまうと外壁に吸い込まれてしまって施工不良を起こすでしょう。
このため、プライマーを先に外壁に吸わせて施工不良を防ぐのです。
塗装だけではなくシーリング剤(目地を補修するゴム状の素材)にもプライマーは使います。
プライマーをすることでシーリングの密着性が高くなり、剥がれにくくなるでしょう。
付加機能を与えられる
プライマーには付加機能を与えることができます。
例えば、防腐剤と混ぜ合わせて塗装することによって、カビなどを防ぐ下塗りとして効果を発揮します。
遮熱塗料のように、仕上げ塗料の種類によってはプライマーも遮熱性を補助するケースがあります。
また、雨に強いプライマーもわずかながら存在します。
4 プライマー塗装をするデメリット
メリットがある一方で、デメリットについても理解しておかなければなりません。
プライマーには3つのデメリットがあります。
水性プライマーは乾燥しにくい
水性のプライマーだと乾燥に時間がかかる点がデメリットです。
施工する業者としても、工期が延びてしまうのは望ましくありません。
一方で、油性のプライマーであれば乾燥時間は短いためデメリットにはならないでしょう。
傷の補修ができない
劣化した壁には、多くの亀裂が存在します。
ひび割れ、サビなど劣化した壁にそのままプライマーを塗ってしまうと、同じ部分からひび割れが発生してしまいます。
このため、プライマーの前に補修作業を行う必要があるでしょう。
補修方法としてはモルタルやシーリングがあります。
悪臭がする
油性のプライマーは刺激臭がすることがデメリットといえます。
水性のプライマーであれば悪臭は少ないでしょう。
臭いを気にする乳幼児や妊婦、高齢者、アレルギー持ちの人がいる場合は水性を使うようにしましょう。
5 プライマー塗装をしないと起こる問題
以下では、プライマー塗装を行わないことによって引き起こされる問題について3つをチェックしていきましょう。
塗りムラができる
プライマー塗装によって、上塗り剤との馴染みかたが変わってきます。
プライマー塗装を行わないまま上塗りを行ってしまうとムラができ、仕上がりに差が出るでしょう。
工期の短縮をはかるために下塗りを省くとムラがある外壁になりやすいため、施工業者が下塗りをしているかはよく確認しておきましょう。
塗装の耐用年数が短くなる
プライマーをしないことで中塗りと上塗りが密着せず、塗装の耐用年数が短くなります。
施工して数年で一気に劣化する場合は、プライマーによる下地処理が十分ではなかったことが考えられます。
6 プライマー塗装が無ければ施工できない場合がある
外壁塗装の工程の一つに「シーリング」があります。
建物の防水性、気密性を保っていくために外壁の継ぎ目や隙間に充填する材料です。
シーリングを塗装する場合は、プライマーを施さなければ密着しない場合があります。
主な例としては「変性シリコン」のシーリングです。
変性シリコンは使える下地が幅広く、汚染も少ない優れた材料です。
変成シリコンは塗料を弾く性質があるため、特殊なプライマー無しでは塗装ができません。
7 プライマー塗装の種類と特徴
プライマーは種類によって特徴も異なってきます。
どんな外壁にどういったプライマーが適切かの基礎知識を以下の表で詳しく知っておきましょう。
水溶性・油性プライマー
下地の劣化が少ない新築物件の外壁に多く用いられる「水溶性プライマー」と、傷みの激しい外壁に対応できる「油性プライマー」が存在します。
水溶性プライマーのほうが悪臭は少なく、扱いやすさもありますが、乾燥させるために必要な時間が長いです。
一方で油性プライマーは水溶性に比べて密着性が優れているため、劣化がすすんで塗装をしにくい外壁に有効です。
油性プライマーは乾燥に必要な時間が1時間程度と短く、工期の短縮をはかりたいときに利用することもあります。
ただし、油性プライマーは悪臭が強いデメリットがあります。
浸透性プライマー
浸透性プライマーは、経年劣化した外壁にも浸透していき補修してくれます。
浸透性プライマーの上に塗る塗料の密着性も高めてくれるため、外装だけではなく内装に用いられることもあります。
他にも、異なる素材同士の接着にも効果が期待できます。
純粋な下塗りとしてではなく、セメントやコンクリートが剥き出しのデザインにする場合に、強化剤として表面に塗装することもあります。
伝導性プライマー
静電気対策に伝導性プライマーを用いることがあります。
住宅には多く用いられず、工場や事務所といった場所に使用される傾向にあるでしょう。
静電気が帯電して火災につながることのないように塗装されます。
絶縁性プライマー
ガラスやゴムといった、塗料が付着しにくい素材にも塗装することができるプライマーです。
他の塗装と馴染みにくい部分に用いられることはもちろんですが、静電気を発生させないという特性を活かして電気を溜めない環境づくりに一役買ってくれる材料です。
防腐・防錆プライマー
外壁と切っても切れない問題が、サビやカビです。
雨風に日々さらされるからこそ、カビやサビには十分に対策を打っておかなければなりません。
雨樋のように露出している金属部分には、まずサビを落としてから塗装をすることが一般的でした。
しかし、近年ではサビの上から塗装できるプライマーが開発されて重宝されています。
サビの進行をストップするとともに、既に腐食してしまっている部分も進行を食い止めてくれるため、とても便利な塗料といえます。