サイディングやモルタルの外壁に塗装を行って5~10年以上たつと、触ったときに手に白い粉がつくという事が起こります。
これは外壁塗装の代表的な劣化現象の一つでチョーキング現象(白亜化現象)と呼ばれるものです。
チョーキング現象はある程度劣化した外壁であれば塗装に樹脂塗料を使っている限りはほとんどの場合に起こる現象なので、外壁の塗り替えを行う良い目安と言われています。
しかし、悪徳業者や強引な訪問業者もそのことは知っており、「チョーキング現象を放っておくと壁が崩れてきてしまう」などと嘘を言って契約を取るなどの行為を行う可能性もあります。
1 チョーキング現象(白亜化現象)とは
チョーキング現象とは外壁塗装が塗膜劣化すると起こる劣化症状の一つで、症状としては触るとその外壁の色の粉が手についてしまうというものです。
「白亜化現象」「塗料の風化」「粉が吹く」と言う業者さんもいます。
後述しますが、チョーキング現象は塗膜(外壁に塗料を塗って出来る膜)の中にある顔料が粉化して表面に出てくる現象なので、顔料が含まれていないクリアー塗料など、チョーキング現象が起こらない塗料もありますが、色がついている塗料の場合はほぼ全て経年劣化とともにチョーキング現象は起こると考えておきましょう。
家の外壁にチョーキング現象が起こっているかどうかの確認方法は非常に簡単です。指で外壁をなぞってみると、指に白い粉がついてしまう場合、その外壁はチョーキングを起こしてしまっています。
外壁の色に応じてチョーキング現象で手につく色は変わりますので、当然、茶色の壁がチョーキング現象を起こしている場合は、手に茶色の粉がつきます。
チョーキング現象が起こったという事は、塗膜が劣化してしまっているので、そろそろ外壁を再塗装しなければならないという目安として考えましょう。
2 チョーキング現象が起こる仕組み
チョーキング現象が起こるとき、外壁に塗られた塗料の中ではどのような事が起こっているのか、仕組みを説明します。
外壁や屋根に塗る塗料の成分は、色などをつける「顔料」、外壁や顔料を保護して美観や機能を守る「樹脂(合成樹脂)」、それらがうまく機能したり塗りやすくしたりする「添加剤」の三つで構成されています。
樹脂の種類がアクリル、ウレタン、シリコン、フッ素といくつか種類が有り、この樹脂を耐久性が高い樹脂にすることで塗装がどれだけ長い時間保てるのかが決まります。
この三つが混ざった塗料にシンナーや水を混ぜて溶かし、外壁や屋根に塗るというのが塗料の基本的な構造です。
さらに無機塗料であれば、無機物を混ぜますし、断熱塗料であれば断熱となる元を混ぜて機能の向上を図ります。
チョーキング現象の原因の一つである顔料は、最初から塗料のようにどろどろの物体ではなく、上記写真のような粉の物質で、そこに水を混ぜて絵の具に使って画を描くのに使います。
外壁塗装用の塗料の場合は水の他に樹脂と添加剤を混ぜるのです。
外壁に塗装された塗料は合成樹脂によって塗膜(塗装膜)という膜を形成し、塗った面を保護します。
しかし、毎日紫外線が当たったり、雨、風などが当たったりすることでこの塗膜を保護していた合成樹脂は徐々に分解、劣化していきます。
アクリル樹脂よりも、フッ素樹脂の方が樹脂で出来た保護膜が紫外線などに強いので分解されるまでの期間が長く、寿命が長いということになります。
保護膜である樹脂や、塗膜として安定させてくれていた添加剤がある程度分解してしまった塗装面は、顔料がむき出しになってしまいます。
この顔料も劣化して、粉に戻ってしまい、表面で粉化した状態がチョーキング現象となります。
3 チョーキング現象が起こる原因は劣化か施工不良
チョーキング現象が起こるほとんどの原因は上記の通り、5~10年(塗料による)という長い年月をかけて紫外線や雨、風、湿気などの影響を受けて塗膜が劣化し、顔料が粉化してしまうことによるのですが、それ以外にも施工不良が原因である場合もあります。
施工不良というのは外壁塗装業者が塗装を行った際に、しっかりと手順ややり方を守って作業を行わない(処理方法を間違える、省くなど)事で、これによりチョーキング現象が起こる時期が早まる場合があります。
外壁塗装工事というのは塗料の基本的な知識があり、きちんと分量や攪拌作業等を守れば、基本的にはメーカーが設定している年数は持つようになっています。
例えば、通常のチョーキング現象は一番耐用年数(寿命までの期間)が短いアクリル塗料であっても5年ほど経ってからなのですが、施工不良の場合は、1~2年未満でチョーキング現象が発生します。
同様に、10年以上持つシリコン塗料が数年でチョーキング現象を起こした場合、紫外線が強い、海が近く塩害が起こりやすい地域を除いて施工不良である可能性が高いです。
施工不良は具体的に言えば以下のような事が挙げられます。
- 高圧洗浄を基準以上の気圧が出せる業務用洗浄機で行わない
- 高圧洗浄後の乾燥時間をしっかりととらない
- その他の下地処理を適切に行わない
- 下地に合った下地材(下塗り)を行っていない
- 下塗り塗料に合った中塗り塗料、上塗り塗料を使っていない
- 雨の中に塗装作業を行った
- 塗料を適切に混ぜ合わせていない(しっかりと攪拌していない)
- 塗料を適切な量の水、シンナーで薄めていない(必要以上に薄めているなど)
- 乾燥時間を気温や湿度に合わせて適切にとっていない
- 塗る場所の日当たりなどの立地、材質などの条件を考慮せずに塗料を選んだ
など、様々な事が考えられるので、チョーキング現象があまりに早く起こってしまった場合は、施工を行った業者とは別の業者を呼び、確認してもらいましょう。
ただし、施工不良を起こすような手抜き工事が行われたか後で知る事は難しい場合もありますし、分かったとしてもその塗装をした業者に責任をとらせる事は難しいかもしれません(業者が逃げていたり、責任逃れをしたりする場合があります)。
ただ、責任をとらせられないとはいっても、チョーキング現象が起こった場合、外壁が劣化しているサインで、このまま放っておくとどんどん家が劣化してしまうので、次は優良な業者に塗装を行ってもらうようにしましょう。
4 チョーキング現象が起こったら放置をしない
チョーキング現象は前述の通り、紫外線により塗膜表面の樹脂が劣化、分解されてしまい、顔料がむき出しになって粉状になっている状態で、外壁を守る力がほとんどありません。
つまり、チョーキング現象は寿命のサインともとらえる事が出来、外壁塗装の塗り替えを行う必要があります。
そのままチョーキング現象を放っておいたとしても改善する事はありません。
すぐに壁が崩れていくということはないので焦る必要がありませんが(悪徳業者の中には「すぐに塗装しないと家が崩れる」などと脅してくる業者もいます。後述)、信頼できる外壁塗装業者に相談をしましょう。
チョーキング現象が起こった壁はほとんど保護されていない裸の状態に近いです。水を吸わないように塗装をしていたのに(外壁の目的は防水で、水が壁内に入らないようにし、劣化させないという目的があります)、塗装が剥がれて外壁は水を吸うようになってしまいます。
水を吸ったまま、日光が当たっても吸われた水分が乾ききらないまま時間が経過してしまうとカビ、藻、コケの原因になり美観が損なわれます。
さらに、水を吸って乾いての繰り返しで壁自体が動くと、クラック(ひび割れ)の原因にもなります。
外壁塗装の劣化のいろいろな現象の兆候であるチョーキングは、外壁があなたに送るSOSのサインなので、見逃さないようにして、きちんと塗装を行いましょう。
逆に言えばチョーキング現象が出た時点ですぐに塗装などで対処すれば汚れ、カビ、藻、コケ、ひび割れなどほとんどの症状は未然に防ぐ事が出来るとも癒えます。
水で洗っただけでは不十分
よくある間違った対処法として、粉っぽくなった外壁に水をかけて粉を流そうしたり、ブラシでこすって粉を落とす行為をする方がいらっしゃいます。
チョーキング現象は先に挙げたとおり、塗膜の劣化から起こるものなので、水で流しただけでは根本的な解決になりません。
ましてや高圧洗浄機で徹底的に洗い流したり、ブラシで強くこすったり、研磨剤で磨いたりしてしまうと、保護膜(コーティング)がなくなるだけでなく、家の下地を傷つけてしまう可能性があります。
同様に、「高圧洗浄機でしっかりと洗浄したが、乾いた後にまだチョーキングが起こってしまう」というご相談をいただきます。チョーキング現象は壁全体の塗膜に起こっており、一部分を流したとしてもまだまだたくさんの顔料の粉が外壁に残っているので、乾けばまた粉が出てきます。
チョーキング現象が起こってしまった時の対処法は一つで、徹底的に高圧洗浄で流した後に再塗装して、塗りつぶしてしまうしかありません。
もう洗浄だけではどうにもならないので、外壁塗装業者に相談しましょう。