見積もりを行う前の問い合わせの段階から、リフォームが完成した家を引き渡してもらうまでの一連の流れを、実際にかかる日数も考慮しながらまとめていきたいと思います。
■ 外壁塗装工事の流れ
施工内容や施工手順は、どの家でもどの業者でも全て同じという訳ではありません。今現在の下地(旧下地)の状態や、壁がどのような材質であるかで変わりますし、雨で工事が遅延してしまうなど、天候によっても左右される事を覚えておきましょう。また施工地域によっても違ってくるでしょう。
親切な外壁塗装業者の場合、「○日から○日にかけてはどのような作業を行う」などが記載された工事の工程表を作成してくれます。これを見ることで今現在の工事の進み具合が分かりやすいです。もちろん作業をする業者さんが作ってくれた工程表でも、雨などで遅れればずれてきますので、適宜修正などを入れながら、今現在はどの工程なのかを把握しておきましょう。
工事着工前の挨拶(工事一週間前)
絶対に欠かせないのが外壁塗装工事前の挨拶です。良い施工店であれば「お客様の代わりに」ということで職人が挨拶まわりを行ってくれるのですが、工事の一週間ほど前にご自身でもきちんと挨拶回りをしておくべきです。「業者さんが行ってくれるから大丈夫では?」と考える方も多いのですが、必ず自分でも行くようにしましょう。業者さんだけが挨拶に来て家主が来ない場合、「自分でも挨拶ぐらい来て」と思う方が多いようです。そうなると臭い、騒音など許してもらえるものももらえなくなってしまいトラブルに発展してしまう可能性もあります。そのような事にならないようにきちんと挨拶には直接行きましょう。
外壁塗装工事が隣家の方にもたらすトラブルの元で主なものといえば、工事の音(足場を組み立てる、高圧洗浄機を使うなど)と、塗料の飛散、塗料の臭いです。工事の大きな音で相手の生活を邪魔してしまうような事があった時に、先に挨拶をしているのとしていないのではトラブルに発展する確率が変わります。事前のあいさつできちんと誠意を見せておけば、外壁塗装工事というのは仕方ない工事の一つなので多少のことは大目に見てもらえるでしょう。
挨拶の時は、菓子折や日用品(タオルや地域のゴミ袋など)など500~1,000円を目安として、お土産を渡すとスマートです。話す内容として、家主は専門的な事はあまり話さず、何日目にどのような作業を行う為に、どのような迷惑がかかるのか(洗浄作業の時は水しぶきが飛ぶかもしれない、塗装作業の時は臭いが飛散するかもしれない、足場組立分解の時は大きな音がしてしまうかもしれないなど)、何日頃に工事が終了するなどの日程的な部分や、塗料が飛びそうな所にある車やバイクなどにシートをかぶせると行った作業内容の事に関しては、業者さんが挨拶まわりに行く時に説明するようお願いすれば良いでしょう。
仮設足場工事とシートの設置(1日目)
安全に作業する為に、効率よく作業をする為に、家の周りをぐるりと仮設足場を建設します。作業員がその上にのって塗装作業をする為のものです。足場設置専門の足場屋さんにお願いしている場合もありますし、自社の足場を組む場合もあります。足場は金属で出来ているので、金属音が近所に響きます。それ故、トラブルや近所に不満を持たれやすい工程です。
ちなみに足場がない「足場なし工法」というものを取り入れている業者さんが一部いらっしゃいますが、ロープでぶら下がって塗装を行うという安定性に欠ける物で、今の所はまだ足場に変わるほど良い物ではありません。仮設足場の費用は平均20万円ほどとかなり高く、しかももらえるわけではないものなので、省いてもよいのではないかと考えてしまいがちですが、作業の効率や作業員の安全等を確保し適切な工事を行ってもらうために、支払っておかなければならない費用です。
仮設足場を設置した後は、その周りにメッシュシートを張り巡らせます。このシートは飛散防止シートといい、塗料が周りに飛んでしまうのを防ぐ為のものです。今はスプレーガンによる吹き付け工法がそこまで主流ではなく、刷毛とローラーで塗るだけなので、飛び散ったりしないのではないかと思われるかもしれませんが、かなりの量の塗料が刷毛やローラーでも飛んでしまうので、このシートも必要な物となります。省かないようにしましょう。
注意点として、この段階から家全体が周りから見えなくなってしまいます。飛散防止シートが隠してくれると言う事で、泥棒が入るという事故が起こる可能性がありますし(多くの業者が行き交う現場では、変装してしまえば分かりづらい)、泥棒が入ったと見せかけて業者がものを盗んでいたという事例もあります。周りの家から自宅が見えなくなるので、貴重品を置いたまま家を空けたりすることがないようにしましょう。
高圧洗浄(2日目)
高圧洗浄機は非常に高価な業務用の高圧洗浄機を使い、高圧力の水で一気に汚れを落としていく下地洗浄作業です。高圧洗浄が不要だという業者さんも居ますが、現在の外壁塗装塗装業界では高圧洗浄は必須の工程となっており、高圧の水に弱くへこんでしまうような材質でない限りは行うべき作業です。
高圧洗浄を起こっているときは、窓のカギまでしっかり閉めないと中に水が入り込んでしまう可能性があるので注意しましょう。この段階ではまだ塗料の臭いはしないので締め切ってしまっても問題ありません。
高圧洗浄で大事なこと、注意するべき事は適切な水圧で行われているかどうかという事です。高圧洗浄に必要とされる圧力は14.7MPa(150kgf/㎠)と言われています。圧力計は高圧洗浄機に内蔵されているので、メモリが14.7MPa以上をさしているか確認しましょう。
乾燥(3、4日目)
この後の工程でもたびたび重要になってくる乾燥の期間です。このときは業者さんは何も出来ません。ひたすら天気に任せて乾くのをまつだけです。塗装に関係のない片付け、植物や置物の移動などをこのときにやっても良いでしょう。高圧洗浄を金曜日に行い、土日を使って乾燥させるという方法でも良いでしょう。
高圧洗浄の後は出来るだけ48時間乾燥させて、外壁の表面をしっかりと乾かすことで、その後の塗料などがしっかりと密着するように準備します。乾燥の時間をしっかりと取っていないと、上から塗料を塗ったとき、壁の中に残ってしまった水分が太陽光などで膨張し、壁に泡のようなフクレが出てきてしまうので、乾燥は必ず必要な工程となります。
最低でも高圧洗浄した後は24時間は乾燥させないといけないので、高圧洗浄を行った次の日にすぐ塗装を始めた業者は24時間の乾燥時間をもうけていません。手抜き業者の可能性もありますので、しっかりと工事の内容について話し合うようにしましょう。
下地調整(5日目)
下地調整(下地処理)は今現在の壁や屋根をきちんと新しい塗料がくっついてくれるように様々な処理を行うというものです。先に紹介した高圧洗浄の工程も下地調整の一部と考えて見積もりに記載する業者さんもいます。
下地調整には様々な作業があります。ヒビ割れを埋めて塗料を塗りやすくするための補修、内部の金属部が膨張したために壁が剥がれ落ちた部分(爆裂と言います)にモルタル等をつめる補修、目地のシーリング打ち替え・打ち増し補修(コーキング工事とも言います)、その他の崩れているところのパテ埋めなど細かい作業を行います。どれもに共通するのは塗料を壁につきやすくし、安定させるために壁を平坦にするという点です。
下地補修は外壁塗装工事の中で最も重要な工程の一つで、これをおろそかにする業者はまず間違いなく悪徳業者、手抜き業者と考えて良いでしょう。
養生(5日目)
養生(ようじょう)というのは普段あまり聞き慣れない言葉ですが、塗料がついてはいけない場所などにシートやテープをはり塗料がつかないようにする作業の事をさします。
塗装工事というのはどのように気をつけたとしても、絶対に塗料や洗浄した水などが飛び散ってしまいます。養生をしていないと、その飛び散った塗料により、様々なところが着色してしまうのです。それを防ぐ為に、塗っては行けない場所は全て養生する必要があります。マスキングテープ、ビニールシート、養生シート、マスカーなどの道具を使って養生します。
ドア、窓、手すり、植物、置物など塗料がついては行けないところを徹底的に養生し、塗料が飛んでも大切なものに塗料がつかないようにします。
近隣の車やバイクにも専用の養生カバーをかけることもあります。
<外壁塗装>
ここまでの作業をしっかりとこなした後にはじめて塗料を壁に塗り始めます。
外壁塗装の工程はさらに下塗り、中塗り、上塗りに分かれますが、これは塗料や工法によって多少異なります。しかし、塗料による保護を強めるため、全部で三回以上は塗らなければならない、という事を覚えておいてください。それだけじゃ足りないと四回を標準にしている業者さんもいますし、下塗りを二回しなくてはいけないほど外壁が痛んでいる場合もあります。ここでは平均的な下塗り、中塗り、上塗りの三回塗りの流れで説明いたします。
外壁下塗り(6日目)
下塗りは色をつける事が目的ではなく、色付けと保護が目的の上塗り用の塗料がしっかりと壁に密着する為の薬剤を塗るというイメージです。塗装というよりは下地調整の一部のようでもあります。このときに塗る塗料はシーラーと呼ばれる下塗り専用塗料です。ボロボロになった壁の中にしみこんで固まり、後からの塗料を塗りやすくしてくれます。
下地の状態によって、シーラー、プライマー、フィラー、バインダーなどの下塗り材から使い分けます。例えば、あまり劣化していない外壁の下塗りを行う場合はシーラーを使用し、細かいクラック等が多い外壁に塗る場合は微弾性フィラーを使用するなどです。劣化が酷い下地にシーラーを塗ってもうまく定着しないなど、きちんとした下塗り材を選択しないと上塗り用の塗料がうまく定着せずに剥がれなどの原因になってしまいます。
また、シーラーと微弾性フィラーなど、複数回下塗り塗料を塗る時もあります。今現在の外壁の状態や、後から塗る塗料に応じて適切に替えていきます。複数回下塗りを行った場合は、塗った回数分料金は高くなります。
外壁中塗り(7日目)
中塗りは上塗り一回目と表現される場合もあります。その場合は、中塗りと上塗りの塗料は同じものを使用するのですが、塗料によっては専用の中塗り塗料を塗った上から上塗り塗料を塗るという場合もあります。
中塗りと上塗りが同じ塗料であることが多いですし、その場合、手抜きをされる可能性も高いです。例えば、中塗りを全くしておらず、上塗りしかしていないのに「きちんと中塗りをしております」と言う例です。この場合、後からきちんと中塗りを行ったかどうか判断することは難しいです。しかも剥がれや塗膜不良などの不具合が起こるのは数年後という厄介なものでもあります。そのような事がないよう、中塗りだけできちんと1日使い、中塗りと上塗りの日を分ける事が手抜き防止策となります。
外壁上塗り(8日目)
一番メインの塗料を塗る作業です。意匠性が高い(見た目が格好良い)模様がついたサイディングやモルタル仕上げの場合は、上塗りには透明な塗料(クリヤー塗料)を塗るだけの場合もあります。
中塗りと上塗り塗料は微妙に色を替えることで、何処を今塗っているのか分かります。大手塗料メーカーの塗料などは、中塗りと上塗り塗料の色を微妙に変えてくれているので、塗り忘れの防止になります。
ちなみに塗り忘れの場合も、後から気づきにくい、不具合が出るのが数年後という厄介なものなので、塗り忘れ、塗りムラがないように微妙に色が違うものを指定しましょう。
<付帯部塗装>
外壁や屋根以外の部分(破風板、鼻隠し、軒天、雨樋、雨戸、ベランダ、鉄部、木部)など様々な部分の事を付帯部と言います。明確にいつやるか決まっているわけではありませんが、塗料などによって適切なタイミングで塗装を行います。
雨戸を外して業者さんの工場に持ち帰り、塗ってくれる業者さんも居ます。その場合、屋根がある室内での作業になるので、雨の日も塗る事が出来るというメリットがあります。
<屋根塗装>
外壁の塗装が終わったら、屋根に関しても下塗り、中塗り、上塗りと塗っていきます(高圧洗浄や屋根下地の調整も行います)。外壁同様、屋根も三回以上の塗装が必要です。屋根は、直射日光、雨風を絶え間なく受けるので外壁以上に過酷な環境なので、不具合が出やすい部分となります。
屋根下塗り(9日目)
下塗りでは下地に合った下塗り塗料を塗ります。下塗り塗料は外壁と同様で、シーラー、フィラーなどの中から今現在の屋根の材質や状態にあった適切な下塗り塗料を選択する必要があります。
縁切り、タスペーサー設置(10日目)
下塗りを塗った翌日、塗料が乾いた後に縁切りという作業が必要になります(コロニアル屋根などの一部屋根材のみ)。
人気の屋根材であるコロニアル屋根は、塗装した後塗料が乾くと屋根と屋根が塗料によりくっついてしまいます。そのままにしてしまうと、雨水を中まで浸入させて雨漏りの原因となってしまうので(狭い隙間ほど奥まで水が入り込む毛細管現象が起こる)、屋根と屋根の間の隙間をあける作業が必要となるのです。これが縁切りという作業で、皮スキという道具を使って行います。
また、下塗りした後に縁切りをしても、中塗り、上塗りをすればまた屋根はくっつくので再度縁切りをしなくてはなりません。その手間がないように、縁切りをした後にタスペーサーという小さな部品を屋根と屋根の間にはめ込みます。こうすることで、屋根と屋根を確実にくっつかないようにするのです。業者さんによってタスペーサーを使う使わないはありますが、縁切り自体は必ず必要な作業ですので、行っているか必ずチェックをしましょう。
屋根中塗り(10日目)
下塗り塗装をした後に二回目の塗装工程である中塗りを行います。中塗りは上塗りと同じ塗料を使うので、上塗り一回目と言う場合もあります。
中塗りと上塗りの間の時間しっかりとあけて、中塗りした塗料が乾いてから上塗りを行うので、通常、上塗りは中塗りの次の日となります。
屋根上塗り(11日目)
中塗りと同じ塗料をもう一度塗る事によって、より塗膜を分厚くし、長い間しっかりと屋根を守ることが可能になります。こちらも外壁同様、塗料の色を少し変えて、塗りムラや塗り忘れを防ぎます。
これ以上、上から塗料は塗りませんので、しっかりと見栄えを考慮しながら丁寧に塗ります。
養生取り(12日目)
養生作業で設置したマスキングテープやビニールシートなどを丁寧に剥がしていきます。処理したゴミが出ますが、業者さんが持ち帰ってくれます。
安物や、使用期限が過ぎてしまったような質が悪いマスキングテープなどを使っている場合、剥がした後にべとべとしたものが残ってしまいます。それは後からしか分からないので、べとべとが残っているようであればしっかりと業者さんに処理してもらいましょう。
業者による確認作業、顧客による確認作業(12日目)
まずは業者自身が家の周りをしっかりと確認し、塗り残しがないか、余計な部分に塗料が付着していないかなどをチェックします。塗り残しはもちろん塗り直し、塗料の付着はシンナーなどで丁寧に除去します。
その後、施主と業者が一緒に家の周りを最終チェックします。後からトラブルにならないように、気のつく限り隅々までチェックしておきましょう。基本的に塗った後、10年間は塗り直さないので、これ以上ないぐらいに確認作業は行いましょう。
ちなみに、足場が設置されているうちに不具合を確認しておかないと、後から気づいて手直ししようとおもっても、足場代が別でかかってしまいます。
足場解体(13日目)
これまでぐるっと家を囲っていた、飛散防止シートと、仮設足場を解体します。これで新しくなった家全体を見ることが出来ます。このときも気になる部分がないか再度確認しましょう。
ポイントとしては、一昼夜きちんと確認することです。昼の見え方、夕方の見え方、夜の見え方と太陽の位置や光の当たり具合によって、外壁は異なる見え方をしますし、気づかないところにも気付く場合があります。様々な状況下で確認することが必要です。
清掃(13日目)
使った塗料缶、養生道具など工事の時に使った様々なものを片付けます。
ここでのポイントは塗料缶をいくつ使っているかチェックするということです。悪質業者が必要以上に水やシンナーで薄めた塗料を塗っていたとしたら、当然、缶の数は少ないです。適切な薄め方で適切に塗った場合にのみ適切な数の塗料缶が残っているはずなので必ずチェックします。ないとは思いますが「なくなった分から先に処分した」などと言い逃れされないよう、使用済みの塗料缶の監視は怠らないようにしましょう。写真を撮っておいても良いです。
引き渡し(14日目)
工事の内容に問題がないことに両者ともに納得すれば引き渡しとなります。長い間お疲れ様でした。
工事完了後の挨拶(14日目)
工事が終わった後は、近隣の方々に工事終了の挨拶と、迷惑をかけた事による謝意を伝えて外壁塗装工事は終了となります。
ここまで14日と書きましたが、雨などの影響で遅れてしまう場合もありますし、湿度が高いなどで乾きが悪い場合はさらに乾燥時間を取る必要があります。不安な部分はきちんと業者さんに確認しながら、良い外壁塗装工事を行いましょう。