外壁や屋根の汚れを強力な水圧で洗い落とす「高圧洗浄」は、外壁塗装工事では絶対に欠かせない作業の一つです。
しかし、「汚れを落として外壁や屋根をきれいにするためだけなら高圧洗浄は省いてしまっても良いのではないか」と思う人も多いかもしれません。
水しぶきがたくさん飛びますし、周辺もずぶ濡れ、時には近所の家にも飛ぶこともあるでしょう(飛散防止シートをしますが)。
そこまでして高圧洗浄をする必要はあるのでしょうか?もちろんあります。
1 外壁塗装ではなぜ高圧洗浄が必要なのか
家の大きさによって数万円の規模になる外壁塗装の高圧洗浄ですが、実は非常に重要な役割を担っています。
もちろん、昔は電動の高圧洗浄機というものは存在しませんでしたので、外壁や屋根洗浄専用の機械がなくても、手作業で行おうと思えばできる作業なのです。
今でも「高圧洗浄機は必要ない」と言ってくる業者さんも存在します。
しかし時代は変わり、今では外壁塗装において専用の機械を使った高圧洗浄作業は必要なものとなりました。
1.高圧洗浄によって塗料が外壁に密着する
外壁や屋根の表面に塗装してできた塗膜は、毎日屋外で紫外線、雨風、排気ガスなどにさらされているので、年月とともに耐久性が劣化していきます。
劣化した場合は、そのままボロっと丸ごととれるわけではなく、少しずつ粉化していくのです。
これを塗料の「チョーキング現象(白亜化現象)」といい、外壁の表面を手で触ると塗装と同じ色の粉が手につくようになりますので、自宅の外壁にチョーキング現象が起こっているかどうかはすぐに見つけることができます。
チョーキング現象が起こっている外壁にそのまま塗料を塗っても、チョーキングが起きているような劣化した塗膜には粘着力がなくなっていますので、一緒に新しく塗った塗料まで剥がれてしまいます。
そうすると、塗装から年数が経過していなくても本来の耐用年数を迎える前に外壁は修復が必要な状況になってしまうのです。
●高圧洗浄機には人をケガさせる威力のものも
高圧洗浄機というのは私たちの想像がつかないぐらい高圧なものもあります。
高圧洗浄の水は人の身体を貫通させるほどの威力がありますので、実際に死亡事故が発生したり、人に向けて発射して傷害罪で逮捕されたりするほど危険な威力を持つ機械です。
●高圧洗浄の水はバケツやタンクに溜めて使う
外壁塗装用の高圧洗浄機は、塗装を行う住宅の水道と洗浄機本体を直接繋いで水を噴出するわけではなく、大きなバケツやタンクに高圧洗浄用の水を溜めておき、そこから機械で水を吸い上げて内部で圧縮し発射するというしくみになっています。
高圧洗浄機がこのようなしくみになっている理由は、水道に機械を直接繋いでも水の出が遅いため高圧の水を安定的に噴出できないからです。
そのため高圧洗浄用の水をためる時は、バケツやタンクに水道から水が出しっぱなしの状態で放置されていることがあります。
一見水が出しっぱなしで無駄なように感じてしまいますが、あくまで高圧洗浄の作業効率を上げるために水を出し続けているのです。
2.昔ながらの業者の中には高圧洗浄をしたがらない業者も
先に少し触れましたが、高圧洗浄機は昔は当然存在していませんでした。
ニューヨークにある『自由の女神像』などを高圧洗浄機で洗った実績を持つケルヒャー社のホームページによれば、ヨーロッパで初めて高圧洗浄機が開発されたのは1950年ですが、日本に高圧洗浄機のメーカーが登場したのはそれから約40年後の1988年の事でした。
つまり高圧洗浄機が登場してから30年ほどとあまり時間が経っていないため、機械で建物の洗浄を行わない昔ながらの塗装業者さんがいても不思議ではないかもしれません。
しかし、時代の流れで、便利なもの、必要なものは取り入れるべきで、高圧洗浄機は絶対に取り入れるべき技術の一つです。
「高圧洗浄機なんて必要はない」という業者は柔軟性に欠くので、一旦お願いするのを保留しておいた方が無難です(手抜き業者とは限りません)。
昔はブラシ、サンドペーパー、ワイヤーブラシを使って汚れを取りながら塗装を行ったのですが、チョーキングの粉を取り除きづらいですし、リシンなどのデコボコトゲトゲした壁には高圧洗浄機が適切です。
もちろん、ブラシ、サンドペーパー、ワイヤーブラシといった道具も、塗装前に鉄部の錆びを落とすためにケレンで使いますので、建物を清掃する上で必要ではあるのですが、建物一棟を洗浄することにおいては、
- 水分を乾燥させるための時間を確保する必要がある
- 水道代がかかる(水道代は家主負担)
といったデメリットを考慮しても、効率や作業員の手間を考えれば高圧洗浄機は取り入れなくてはならない機械なのです。
2 外壁塗装に必要な高圧洗浄機のスペック
外壁塗装に高圧洗浄機が必要だからといって、Amazonや楽天で低価格で購入できるような家庭用高圧洗浄機では外壁塗装工事で求められる作業を行うことは出来ません。
当然ですが高圧洗浄で最も重要なのが水圧です。
水圧が低い高圧洗浄機を外壁塗装前に使っても、汚れや古い塗膜、コケなどを完全には落としきれませんので自前で行おうとせず、外壁塗装業者が持っている高圧洗浄機に任せるようにしましょう。
テレフォンショッピングや、インターネット通販が普及してきたことにより、高圧洗浄機が身近なものになってはいるのですが、外壁塗装工事に必要な高圧洗浄機は全くの別物のグレードです。
「超」高圧洗浄機と言った方がわかりやすいかもしれません。
一般的な家庭用高圧洗浄機は8~12MPa(メガパスカル)で、外壁塗装工事においては最低でも14.7MPa以上は必要です。
外壁塗装業者さんが使っている高圧洗浄機は基本的に問題ありませんが、まれに全く高圧ではない洗浄機でただ流している悪徳業者がいることもありますので、気圧計が、15MPa以上を指しているか確認しておきましょう。
ちなみに高圧洗浄機によっては、MPaという単位ではなく、kgf/㎠と表す場合があります。
これは「1㎠に対し、何キログラム重の圧力がかかっているか」を表す単位で、MPaが普及する前まではよく使われていました。
14.7MPa=150kgf/㎠に直すことが出来るので(1 kgf/cm2 = 98.0665 kPa )、業者が使う高圧洗浄機に求めるスペックとしては14.7MPa以上、または150kgf/㎠以上の水圧のものとなります。
●高圧洗浄機の使用中は騒音が発生する
住宅地で使うものなので、静音(防音)タイプのものが望まれます。
静音タイプの高圧洗浄機は60デシベルほどの音しか発生させませんので、作業中も比較的音が気になりません。
ちなみに環境省が出した騒音の目安によれば、60デシベルは「銀行の窓口周辺」や「博物館の館内」に該当する静けさとなっていますので、住宅の工事で発生する騒音としては静かなレベルと言えるでしょう。
静音タイプでないものはオープンタイプ、もしくは開放型と言って、80~90デシベルほどで、目安としては「航空機の機内」「ゲームセンター店内」「パチンコ店内」くらいなので強烈にうるさいです。
外壁塗装業者は基本的に、閑静な住宅地が主な作業現場になりますので、当然、防音タイプの高圧洗浄機を持っているはずですが、高圧洗浄機を所有していない業者の場合は機械をレンタルすることがあり、レンタル品の中にはエンジン部がむき出しになっていて大きな音が発生するオープンタイプもありますので、必ずしも静音タイプが使われるとは限りません(ご近所に騒音で迷惑をかけたくない、という方はお願いする業者が静音タイプの高圧洗浄機を所有しているか確認しておくのもよいでしょう)。
また、騒音値は本体のエンジン音の事ですが、高圧洗浄時には水が外壁を洗ったときの音も発生し、これもそれなりに大きな音がします。
工事前には施工業者が近隣に挨拶をしてくれますが、高圧洗浄作業中に騒音が発生することは欠かさず伝えてもらうようにしましょう。