日曜大工で庭の塀や柵などのペンキ塗りをしたことがある人は、汚れやシミ、ひび割れが目立つようになった自宅の外壁塗装も、「日曜大工のペンキ塗りで」と思うことが多いようです。しかし、外壁塗装と日曜大工のペンキ塗りはまったく異なります。たとえ部分的な外壁塗装であっても、日曜大工のペンキ塗りの要領で外壁塗装をしてしまうと、外壁全体が傷む原因にもなりかねません。
1 ペンキ塗りと外壁塗装との違いとは?
ペンキ塗りは塀や柵などの見栄えをよくする目的がありますが、外壁塗装はそれに加え、外壁自体を風雨、太陽光、気温変化などの自然負荷による劣化から守る役割があります。
例えば、外壁材には断熱機能はあっても防水機能はありません。外壁材は塗装により防水機能を備え、また自然負荷への耐候性を備えることができるのです。
外壁に汚れやシミ、ひび割れができるのは、外壁の防水機能や耐候性が衰えてきたことを示しています。したがって、外壁塗装は単なる塗装ではなく、築年経過で防水機能や耐候性が衰えた外壁の機能回復工事ということができます。
2 下塗り塗装の役割
外壁塗装は「下塗り→中塗り→上塗り」の3工程から成っています。各工程の違いは次の通りです。
1.下塗り
下塗りは外壁塗装の基本となる、最も重要な工程です。下塗りには中塗り・上塗りとまったく機能も成分も違う塗料を使用します。また、下塗りには次のような役割があります。
・外壁材と塗料との接着力を高める
下塗りはサイディングボード、コンクリート、モルタルなどの外壁材と中塗り・上塗り塗料との接着力を強め、耐久性(防水性と耐候性)に優れた外壁塗膜を作り出すのが目的です。「下地強化剤」とも言われ、下塗り工程を経ないと外壁材に中塗り・上塗り塗料が定着しません。
・外壁材への塗料染み込みを防ぐ
下塗りをしないで中塗り・上塗りをすると、外壁材を直接塗装することになります。すると、塗料の気泡、その他の要因により外壁材を逆に傷める可能性があります。また、表面をきれいに塗装しても、塗料が外壁材に染み込むため、時間が経過すると塗りムラが発生し、美観に優れた外壁塗装にはなりません。
外壁材と塗料との接着力も弱く、結果的に外壁の耐久性も損なうでしょう。
2.中塗りと上塗り
中塗りは、上塗りのための平滑な塗膜を作るための塗装です。下塗り塗料の色を隠すとともに、下塗り塗料と上塗り塗料との密着性を高める効果があります。上塗りは原則として中塗りと同じ塗料を使います。
塗料は液体なので、塗料が乾燥すると液体中の気体分散により気泡が発生します。これが塗りムラの主な原因になります。上塗りは、中塗りの塗りムラを塞いで塗膜に厚みを付け、仕上がりのきれいな外壁塗装を実現するとともに、外壁の耐久性と美観を高めます。
3 下塗り塗料の種類
外壁塗装の主な下塗り塗料は「シーラー」、「プライマー」、「フィラー」の3種類です。それぞれの違いは次の通りです。
シーラー
シーラーは外壁材に中塗り・上塗り塗料を密着させる接着剤としての機能を持っています。また、外壁材への中塗り・上塗り塗料の染み込みを防ぐ抗浸透機能も持っています。
外壁にシミややひび割れがない場合は、下塗りにシーラーを用います。シーラーを塗るとシミやひび割れが塞がれて外壁が平滑化するので、後工程の中塗り・上塗り塗装がきれいに仕上がります。
シーラーには水性タイプと油性タイプがあり、水性タイプのシーラーはコンクリート、モルタル、石膏ボードなどの外壁材にしか使えません。それ以外の外壁材の場合は、油性タイプの「浸透性シーラー」を使います。水性タイプのシーラーと比べて接着力が強く、外壁材の内部まで下塗り塗装ができるので、外壁自体の強度も高められます。浸透性シーラーは、主にPC板、ALC板、GRC板、押し出し成形板、窯業系サイディングボード、風化してしまったコンクリートやモルタルなどの外壁材の下塗りに使用されます。
プライマー
機能はシーラーと基本的に同じです。外壁材が鉄、ステンレス、アルミなど金属系サイディングボードやパネルの場合に使用します。
プライマーには外壁材のさび落とし機能はないので、下塗りをする前に外壁材に発生したさびをサンドペーパーなどで除去しておく必要があります。
フィラー
フィラーはシーラーやプライマーにパテ機能を追加した下塗り塗料です。
外壁にシミ、ひび割れ、凹凸などができていて、中塗り・上塗りが困難な外壁の場合、外壁材の表面を平滑化する下塗りとして使用します。機能はシーラーと基本的に変わりません。