「外壁塗装」と聞くと、外壁に塗料を塗る工程を真っ先に想像しがち。でも、塗料を塗る前に欠かせない工程があることをご存じですか? 外壁塗装をきれいに、長持ちするように仕上げる「高圧洗浄」。
1 「高圧洗浄」ってなに?
高圧洗浄とは、専用の機械から水を噴射させ、その圧力によって外壁や屋根に付着したゴミや汚れをきれいに落とす作業のことです。
外壁塗装は、経年劣化によりホコリ・コケ・カビといったゴミが付着したり、塗料を覆う塗膜の密着力が弱くなったりします。そのような状態のまま塗装を施すということは、ゴミを挟んだままあえて密着しにくい外壁に塗料を塗るようなもので、早期の剥がれにつながりかねません。
塗装前に高圧洗浄を行うことで、ゴミや汚れの除去はもちろん、古い塗膜も取り除くことができます。
*パワフルな高圧洗浄機
外壁のゴミや汚れを長い期間にわたり放置しておくと、除去しにくいこともあります。そのため業者は、家庭用のタイプより約1.5倍の威力を持つ、業務用の高圧洗浄機を使うのが一般的です。明確な水圧基準はありませんが、業務用のタイプは平均で約15Mpa(メガパスカル)の水圧を誇り、毎分約15リットルの吸水量が目安になります。目安より下回ると、それだけ除去する時間がかかり、水道代や人件費にも影響しかねません。高圧洗浄を行う場合は、どのような高圧洗浄機を使っているかを確かめておくとよいでしょう。
2 高圧洗浄の作業期間
高圧洗浄は、外壁塗装の最初の作業工程である足場を設置したあとに行います。外壁塗装着工から2日目に行うケースが多いです。家の大きさ、築年数(前回からの塗装年数)にもよりますが、家全体に高圧洗浄を施すとなると、1日がかりの大仕事になる場合もあります。作業時間の目安は「3~8時間程度」と考えておけばよいでしょう。
また、高い水圧を用いて外壁のゴミや汚れを除去するため、作業後は外壁を乾燥させなければなりません。水分が付着したまま塗装を施すと、塗料が膨らんでしまう場合も。これは早期の剥がれにつながるため、高圧洗浄後は「乾燥期間」を設ける必要があります。
3 高圧洗浄を必要としないケースも
このように外壁塗装をきれいに、長持ちさせるために行う高圧洗浄ですが、外壁の状態によってはその工程を省くことがあります。主なケースを2つ紹介しましょう。
*鉄部の劣化が激しい場合
まず、鉄部を塗装する際は、サビの有無を確認します。サビがある場合は除去してから塗装に入りますが、水で繁殖するサビに高圧洗浄は逆効果です。仮に高い水圧でサビを除去しきれたとしても、サビの発生原因となる水を使用するため、かえって増殖を促してしまいます。したがって、鉄部のサビを除去する際は、高圧洗浄ではなく「ケレン」(家の塗装の際に塗装部分の劣化やサビを研磨して除去する作業)を施すのが一般的です。
*下地の劣化が激しい場合
また、下地の劣化が激しい状態で水圧をかければ、さらにダメージを与えてしまいます。その結果、下地はボロボロになり、最悪の場合は外壁そのものが崩壊することも。また、下地が木製の場合、そこに水をかけることで「腐食」の原因にもつながります。下地の劣化が激しい場合は高圧洗浄機を使用せず、シーリング施工などで下地の補修を行い、壁面にはケレンを施すのが一般的です。
4 高圧洗浄の注意点
高圧洗浄を行う場合、主に注意すべき点を4つ挙げます。
*外壁材によってはブラシ対応もある
高圧洗浄は高い水圧を必要とするため、外壁材の種類によってはダメージを受けてしまうものも。そうした際には高圧洗浄機を使用せず、壁面にブラシをあてる手作業で対応します。特に屋根などに使われる外壁材は痛みやすいことから、ブラシを使用することが多いです。「高圧洗浄機まかせ」の業者には注意しましょう。
*高圧洗浄の当日は外干しを控える
物干し場の周囲で高圧洗浄を行う際は、洗濯物の外干しは控えたほうが安心です。大半は施主に対して事前に施工日を知らせておくものですが、連絡の食い違いなどがあると、洗濯物をずぶ濡れにされてしまうかもしれません。施工当日は部屋干し、またはコインランドリーの利用を検討しておくとよいでしょう。
*高圧洗浄の際は窓を閉めておく
高圧洗浄機は高い水圧を誇るため、窓を開けたままにしておくと水が室内に入り込むこともあります。施主が在宅している場合は問題ありませんが、家を空ける際には窓をしっかり閉めるよう心がけておきましょう。業者に高圧洗浄のスケジュールを事前に確認しておくことをおすすめします。
*万が一に備えて補償を検討しておく
窓枠や駐車場の周囲を高圧洗浄する場合、窓ガラスやマイカーの損傷が起こることも考えられます。業者が保険に加入していれば補償の対象になりますが、未加入のままだとトラブルに発展することも。そのため、契約前には業者が「請負業者賠償責任保険」に加入しているかどうかを確かめておきましょう