1 トタン屋根の特徴
トタン屋根とは金属屋根の一種で、正式名称は亜鉛めっき鋼板葺きといいます。
戦後から全国で普及しはじめ、現在主流のスレート屋根などがなかった時代に、日本瓦に比べ材料が安く施工期間も短いため、1950年代の高度経済成長期に多く施工されました。
現在でも、雪国である東北や北海道の住宅では多く存在しますが、それ以外の地域では見かけることが少なくなりました。
・トタン屋根の良い点
トタン屋根の良い点は、日本瓦と比べると1/100の重量と軽いため耐震性が高く、積雪にも強い特徴があります。また、継ぎ目がないため雨漏りに強く、緩勾配にも対応できるのも特徴です。
日本瓦だと瓦自体が重く、その上に雪が積もると、建物が崩壊する可能性があります。
・トタン屋根の悪い点
トタン屋根の悪い点は、耐熱性能が低いところです。夏場は屋根が高温になり、建物構造によっては室内がとても暑くなります。また、耐久性が低く、錆がでると一気に広がる特徴があります。防音性も低いので、室内にも雨音が響きます。
2 トタンとガルバニウム、ブリキの違い
トタン、ガルバニウム、ブリキは総称して金属屋根と呼ばれます。どれも鋼の表面に金属の膜をつける「めっき」を施した素材で、見た目はとても似ていますが、めっきの成分に違いがあり耐久性が異なります。現在の金属屋根はトタンに代わり、耐久性の高いガルバリウム鋼板が主流になっています。
・トタン屋根の耐久年数
トタンのめっきは、ほぼ亜鉛から出来ています。耐久年数は8年~10年程度ですが、傷が付くと数年で一気に錆が出てきます。
・ガルバニウムの耐久年数
ガルバリウムのめっきは、アルミニウムと亜鉛が半々ぐらいで珪素が少量含まれています。3つの中で最も耐久性が高く、20年以上も耐久性があります。ただし、傷が付くと耐久年数以前でも錆が出ます。
・ブリキの特徴
ブリキのめっきは、スズから出来ています。傷が付くとすぐに錆が出るため、屋根材としては使用されません。昔は雨樋などの付帯部分で使われることがありましたが、現在では雨樋もガルバニウムが使われるようになってきています。
3 屋根にみられる劣化
トタン屋根には下記のような劣化症状が現れます。劣化症状は塗装を行う時期の目安なので、症状がでたら塗装を検討する必要があります。
・塗膜の劣化による変色とチョーキング
トタン屋根は、塗装で形成される塗膜によって守られています。塗膜が紫外線をうけて劣化し、色が褪せるように変わる状態を「変色」といいます。変色が起きると、塗膜がもつ保護機能が低下してます。
また、塗膜が白い粉を噴いてる状態を「チョーキング」といます。変色と同様に、紫外線によって劣化している状態です。
・カビ・コケの発生
金属素材であるトタン屋根にはカビやコケは発生しません。但し、砂や埃が付着している場合は、カビやコケが発生することがあります。
砂や埃は水分を含んでおり、それが原因となってカビやコケが生えます。カビやコケは塗膜を劣化させる原因になります。
・塗膜の膨れと剥がれ
塗膜の膨れや剥がれがある場合は、早急に塗り替えが必要です。塗膜が持つ保護機能が失われいて、トタン自体が直接ダメージを受けている状態です。
雨漏りや腐食が起こり劣化が進行すると穴が空き、大掛かりな修繕や張り替えが必要になるため、塗装よりも多額の費用がかかります。
膨れや剥がれ起きる原因は、塗り替え時の下地調整の不足があげられます。今はほとんど使われませんが、アクリル塗料で塗装していた場合は、熱収縮が原因の可能性もあります。
・錆びの発生
傷や経年劣化でめっきが剥がれると、その部分が錆びます。トタンは錆びが数年で一気に広がる特徴があるので、早急に塗り替えを行う必要があります。
錆びが進行して穴が開くと、塗装では対応できず大掛かりな補修が必要になります。
4 トタン屋根の塗装工程
トタン屋根の塗装工程は、「高圧洗浄」→「ケレン」→「錆止め」→「上塗り2回」になります。一般的な屋根塗装との違いは、下地調整である「ケレン」の工程がある点です。
トタンは金属製の素材なので、高圧洗浄だけでは落ちない汚れや錆びが存在します。それらを除去するために、ヤスリや電気工具で屋根を擦ることをケレンといいます。また、塗膜の密着を良くするため塗装面に傷をつける目的もあります。
ケレンの工程が、トタン屋根の塗装で最も重要な部分です。剥がれや膨れの施工不良は、ケレン不足が原因で起こることが最も多いです。