外壁や屋根の塗装を検討するにあたって、塗装業者から無機塗料を奨められる人が増えてきています。
値段が高くても非常に耐候性が高く20年以上持つので、塗り替えに採用するとメンテナンス費用が大幅に削減できるという提案が多いです。
無機塗料はその耐候性の高さから、近年注目されているということを以前にもどこかで聞いたことがありますが、聞きなれないので自宅に採用するとなると不安になるでしょう。
そもそも現在の外壁、屋根の塗装工事で使用されている塗料のほとんどは有機塗料と呼ばれるものなので、無機塗料とは何なのかあまり知られていません。
1 無機塗料とは
塗膜劣化の原因は、塗料に含まれる有機物だった
一般的な塗料は有機塗料と呼ばれ、石油などの有機物(炭素を含むもの)を主成分とした樹脂を使用しています。
アクリル・ウレタン・シリコン・フッ素などの樹脂がこれにあたり、塗膜の基本性能は樹脂によって大きく左右されます。色あせやチョーキングなどの塗膜の劣化事象は、この有機物が原因となり発生します。
一方、無機塗料は、鉱物やレンガ、ガラスなどの無機物(炭素を含まないもの)を配合して作られた塗料です。一般的にはセラミックやケイ素などの無機物を主成分とした塗料のことをいいます。
無機物は紫外線で劣化しないため、無機物自体は半永久的な耐久性を持っています。
無機物を100%使用して塗料を作ることができれば、半永久的な寿命を持つ塗料を作ることも可能です。ビルのガラスが何十年経っても、劣化しないのと同じことです。
しかし実際にはそれでは固すぎて塗料として使用することができないので、無機物の耐久性を活かしつつ、有機物を混ぜて作った塗料が無機塗料です。
しかし無機物が何パーセント以上含まれていたら無機塗料というのか、という定義は特にありません。
無機塗料には様々な種類があり、中には質の良くないものや効果が実証されていない無機塗料を高額な値段で勧めてくる悪質な業者もいます。
少しでも無機物が含まれていれば無機塗料と呼ばれていることがあるので、無機塗料を選ぶ際には注意が必要です。
2 無機塗料のメリット
では無機塗料の特徴にはどんな点があるのでしょうか。メリット、デメリットに分けてそれぞれ見ていきましょう。
・耐候性が高い
無機物を主成分としているため、雨や紫外線の影響を受けにくいので劣化しにくく、外壁表面を長期間にわたって保護します。
フッ素を超えるほどの耐候性があるといわれています。
・カビ、こけが発生しにくい
カビやこけの栄養分である有機物の含有量が少ないため、カビやこけの発生を抑えます。
・低汚染性と防汚性に優れている
無機物は親水性が非常に高く、表面に汚れが付着しても汚れを浮かせ、雨水で洗い流す特徴があります。
また静電気が起きにくいので、ホコリなどのゴミを寄せ付けない塗膜になります。
・不燃性がある
無機物は鉱物やレンガ、ガラスのことなので燃えません。無機塗料は100%無機物ではないので全く燃えないわけではありませんが、有機塗料と比べて火事の際などにも燃えにくいというメリットがあります。
3 無機塗料のデメリット
・ひび割れしやすい
無機塗料では固い塗膜となるので、外壁表面がひび割れした場合に無機塗料の塗膜も一緒にひび割れを起こしてしまうことがあります。
ひび割れしやすい外壁には不向きな塗料といえます。なおひび割れが気になる場合には、弾性力が高い無機塗料もあるので、そのような塗料を使うことで対応することが可能です。
・価格が高い
塗料に配合されている無機物の値段は安くないので、一般的な有機塗料と比較すると、価格が高くなります。
・再塗装ができない場合がある
無機塗料には塗膜表面に汚れが付着しにくいという特徴があります。そのため再塗装する場合には、新しい塗料と無機塗料で形成された旧塗膜が密着しにくく、早期に剥がれてしまうことがあります。
・職人の腕で効果が異なる
無機塗料の高い耐候性を発揮させるためには、一定の厚みで塗装する職人の技術が不可欠です。高価で高性能の塗料になるほど、施工実績豊富な熟練の職人に工事を依頼する必要があります。